13年ぶり

先ほど、ブックオフでふと手にした書籍。



「感動」禁止!―「涙」を消費する人びと



img20070225.jpg凄い驚いたのが、この本の著者。

八柏龍紀」氏は実は、13年前に自分が

日本史を習っていた予備校の先生。



世間的な予備校の先生とは違い、受験は

あくまでも受験のためであって、日本史を

理解するには、受験に出てこないような

ことを勉強しなさいと常々口にしていた方。



とても、印象深いのが、沖縄史についての

授業中に、戦争についての憤りからか

涙を流しをしていたことを思い出す。



それは、予備校教師によくあるパフォーマンス

とは、全く違うもの。この先生のおかげで、

予備校時代はとても充実していた。



そんなこともあり、小中高と尊敬する先生は

いなかったし、大学においてもいなかったが、

人生の中で唯一尊敬していたと言える人は

この人くらいしかいない。





で、歴史を中心にやっている人だと思っていたが、

社会学の本を出しているとは意外だが、読み始めて

みると、とても面白い。



毎回、授業のポイントをまとめた配布物の中に、受験とは関係ないコラムがありそれを楽しみにしていたのだが、それと同様、文章そのものに吸い込まれていく。



そして、内容は現代社会において「感動」は切り売りされているが、感動とは本来自分の心の中から湧き上がってくるものではないだろうかということについて論じている。



例えば、お金を払って「世界の中心から愛をさけぶ」のDVDさえ借りれば、簡単に人は感動するし、「冬のソナタ」を見て感動する人もしかり。



自分は今、マーケティングを勉強しているが、そちらは逆で「感動を売れ!」ということが、最近のキーワードだ。売るほうとして、例として出されるのが「ディズニーランド」。



企業側から見れば、感動を消費者に売れば、リピーターが増える。消費者もお金を払えば感動を味わえる。で、この本は、そういう風に感動は「消費物」になってしまっていると言っている。



まだ、読みかけだが、社会学でここまで面白い本は久しぶり。

残り半分が、とても楽しみ(多分、今日中に読んでしまうが)。



動物化するポストモダン』と視点が同じであり、見た目だけの切り売り型の消費構造を理論化したもので、あわせて読むと、より現代社会の消費スタイルが理解できるだろう。





ただ、八柏先生の場合は、昭和の若者が抱えていた精神世界についても書かれている。「全共闘運動」から「あしたのジョー」に表される、その当時の若者達の心の空虚さが。



これを読んでいるうちに、結局はいつの時代も、「若者の心は満たされない」んだなと。その空虚さが1つのマーケットとなり、また時代の象徴となっていく。



もう1度言うけど、いつの時代も若者の心は、簡単には満たされないもんなんだね。今の時代の若者が不幸じゃあないんだ。









そんなことを、高校教師、予備校教師として若者を何十年も見ている人が論じているんだから、説得力があるね。