騙されるより騙すほうがいい

img20070924.jpg自分の判断が、どれだけマスコミやブームに踊らされているのか?

そんな試行回路について、脳科学的な視点から書かれているのが『騙される脳』という一冊。



人の脳は、期待と実際が一致した時に喜びを感じる。期待以上だとなおさらだ。

また、人よりも先に情報を得ること。そして、それを自慢することも。



「予測すること」「人より先」「自分でやる」。

これが、脳に対する最大の報酬だという。



一昔前だと、口コミには限界があり一般大衆の影響力はほとんどなかった。せいぜい、友人から校内へと広まればしめたもの。

社会的に影響を及ぼすことなんてほとんどない。ルーズソックスのようにそれらが渋谷などの特定地域で広がり全国的なブームになるのは希少だった。

ブームなんてマスコミくらいしか作れなかった。



しかし、今はインターネットがある。

ネットサーフィンはある程度の結果を「予測」しながらやるだろうし、発見したものは「ブログ」に書くことで自慢できる。

何よりもマスメディアではなく、自分自身が情報発信源になることが出来る。



人の購買行動がAIDMAからAISASに変わったのもうなずける。明らかにインフラが発達している。

それらに着目してか、バズマーケティングやインターネット広告がここ数年伸びている。



この書籍を読んでいると、人の欲望があるところに「マーケット」があることがわかりやすく書かれている。

現代における欲望は「ものの取得」ではなく「精神の充足」であることも。



単にブログで情報発信してアクセス数が増えることで精神が満たされることなど、三種の神器などという言葉があった時代では考えられなかっただろう。



ブランド品の消費もそれにつきる。

ヴィトンの新作のバッグなど、みんなが知っているものを誰よりも早く購入すること。

いくら物を持っていても、満足できない。周りからそれを羨ましがられること。それが精神的な充足だ。

ブランド品を購入するときは、周りから羨ましがられることが期待されているのだろう。それが実現した時にドーパミンが大量に溢れ出す。



予測との合致は大事だ。絵画なども知っている画家や歴史の教科書で見たから素晴らしい作品と”理解”する。



そんなように簡単に騙される脳を書いているが、個人的にはマーケティングを理解する上でとても参考になった一冊。

医薬品の開発などは顕著な例で、マーケットがないと新薬は開発されないそう。マラリヤに対する薬が開発されないのも、対象がアフリカの貧困層だからだという。



で、何となくこの本を読んでいる間中、この著者は読者を騙すテクニックをちりばめている様な感覚に陥る。



この書籍の内容を信じるのであれば、ブログというのは人の一番の欲望を満たす大発明なんじゃないかなとも思う。

ただ人には「羞恥心」があるし、自慢したいことが毎日あるような活動的な人も多くはない。ブランド品買うのも一般大衆だとせいぜい半年に1回くらいだしね。

でも、そういう障壁を越えたウェブサービスが成功しているわけで、これからもその欲望を満たすサービスが次々と出てくるんだろう。



この一冊を読んで、やっぱり騙される側より、騙す(ブームを作る)側に立ちたいと感じるね。