未熟さが生み出す自分探し

この本、滅茶苦茶面白い。社会学では久々の大ヒット。







自分探しが止まらない

速水 健朗 (著)



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で、本書によると最近の傾向は、



・ありのままの自分を受け入れてもらえる環境

・みんなで一体となり助け合うことで頑張れる環境




なのが流行らしい。

いわゆる「あいのり」的な人生を送りたいというような。



無理して高収入とかステータスを得るのではなく、背丈にあった生活が理想なんだとか。

自分のありのままをさらけ出し、自分の弱さを認めてくれる優しい人たちと共に、「自己啓発」的な生活をすごすということらしい。



これは、高い志が社会の現実にぶちあたり粉々に砕けてしまう人達が多いからだろうか。

確かに、つまらない社会人生活を数年送ると、収入が少なくてもそういう生活ができる環境が欲しくなる。



ただ、一生そんな生活ができる環境なんてない。

それを認識したときに「自分探し」はとまるもんだ。



自分も1度大学をドロップアウトして、ニュージーランドヒッチハイクしたり、アメリカや東南アジアを放浪したり、バイト漬けの学生生活の後、社会人の途中で育成プロジェクトへの参加やビジネススクールに通い、価値観を共有できる楽しい仲間達と過ごした機会は、誰よりももっており、誰よりも自己啓発的な環境を体験しているのかもしれない。



で、「自己啓発」的な場がなぜ面白いのかというと、それが未成熟だからだと思う。

「居酒屋のオープンメンバー」「大学のサークル」「若手育成プロジェクト」「ビジネススクールの集まり」「ベンチャー企業」などがそう。

集まる人間、そしてその環境のどれも未成熟であり、変なしがらみがないから楽しめる。



バックパッカー」だって、ちゃんとした冒険家と比べれば、かなり未成熟だ。

何も知らずにプロだったら近づかない危険地帯に入って殺されたりもするんだから。



ただ、その楽しい環境には必ず変化が訪れる。

人が変わったり、成長して生意気言い出す人が出たり、資金が底をついたり、外部からちゃちゃが入ったり。

つまり、未成熟なものが成熟に向かい始める段階だ。

未成熟な人間は、人を攻撃しない。だから居心地がいい。居心地がいいから雰囲気を保ちたくなる。

ただ、メンバーの誰かが成熟すると痛いところを指摘され、そこが楽しい場ではなくなることが多い。





でも嫌になっても、若い頃はそういう場を転々とすることができる。

20代の人が圧倒的に多い場所なんかは特にそうだ。



でも、30代になると流石にそうはいかない。

20代で楽しくやっている人間とはなかなか共感しなくなる。

自分自身は未成熟なのに、大人にみられ一目置かれたり。

もちろん、楽しいと思ってたらみんな30代になって、「何やってるんだ俺達」っていってみんなが現実について真剣に考えることもあるかもしれない。





もちろん年をとっても「楽しさ」を追い求め、少しばかり上の立場で起業したり世界一周したりで、自らがその場を作る人間になったりもする。





本書は他人事のように読んでいたが、こうやって考えてみると自分もまだまだ「自分探し」が止まっていない。

どちらかというと、成熟への扉を開いてはいるものの出たり入ったりしつつもドアのぶは掴んだままだ。



自分もそうだが、この職場も昔は楽しかったと1年前を振り返っている人は、まだまだ未成熟なのかも知れないね。



ちょっと前にこんなこと書いたけど(http://naotake.blog.drecom.jp/archive/373)これはバブル期の自分探しだね。いわゆる「ねるとん系」。



この本あまりにも面白いのと自己の体験が重なるので、まだまだいろいろ書けそうだけど、今日はここまで。