現代の私塾とは?
久しぶりの書評だ。
私塾のすすめ ─ここから創造が生まれる
齋藤孝 梅田望夫 (著)
とても面白かった。斎藤孝氏の血の気の多さに驚いた面も大きい。
今度、この人の本も読んでみよう(実は1冊も読んだことがない)。
さて、本題。「私塾」って、若い人たちには、いまいちピンとこないもんなのかな。
こないっていうのは何故かというと、最近は学ぶことに「お金」が発生するからね。
学ぶということが(本質的ではないけど)簡単にお金で買える。
教育をメインにしたビジネスが世の中にどれだけあるかを考えるとよくわかるし、過去にレガシーな企業にいたからわかるが、経営者としても人を「お金」で育てようとする。教育予算っていうものを組んで。
だから、この市場が簡単に成り立つんだろうな。
本当に教育ってものをみんなが理解したら、こんな市場は存在しないだろうから。
本書でも幕末の私塾について書かれているが、これはわかりやすい。
平和で安泰だと思う世の中に、突然黒船がやってくる。
地位あるものたちがその権力にあぐらを掻いている時に、物足りなさや危機的感度が強いものたちが立ち上がる。
レガシーな企業でもそうだ。
経営陣があぐらを掻いていると、若手はだまっちゃいない。
若手がだまっちゃいないから、教育という集合研修で発散させるんだろう。
会社が選らんだはみ出さず、かつ業務じゃ味わえないような新鮮な講義を受けさせ、不満の目をあるべき方向にむけさせられるからね。
私塾が出来ることほど権力からみたら怖いものはないよ。
当時の尊王攘夷のようにそれは善悪関係なく信念的な方向に向かいだすから。
そうなったら、権力に反発することだけが「正」になる。
ベンチャー企業なんて、最初はまさにそんな感じじゃないの。
「志」くらいしか、持ってないんだから。正しいのは自分たちだけ。
あとは、夢に向かって我武者羅に働くしかない。
そんな中に、「はてな」のように梅田さんみたいな人がいるとありがたいんだろうな。
坂本竜馬が勝海舟がいくら幕府側の人間だったからといって、弟子入りしたのはそんな感じだろう。
同じ「志」を持つ人間だけが集まっても気持ちだけで、それが正しい方向か判断できないからね。
私塾のような形でこういう人から学べる経験はとてつもなく大きい。
大企業で集合研修受けさせられるよりも、本の方がはっきりいって面白いが、やっぱり直接学ぶのが一番だ。
知識やテクニックは研修や本から学べるが、やはり仕事に対する「姿勢」は直接じゃないと学ぶことが出来ない。
それがある程度経験できるのがやはりベンチャー企業。
ポイントは仕事を通じて学べるということ。
仕事がないと実践無視で理論だけの大学生と何にも変わらないからね。
同じ志を持つ仲間と、経験豊かな指南役がいる。
そういうところで仕事が出来る環境こそが、現代でいう最高の「私塾」なんだろうな。