半径3メートル以内の思考力

大前研一氏の最新刊。再起動マニュアルと同様、現代社会の生き方について書かれているが、具体的な質問があげられそれぞれに回答するという形式の本書のほうがやや具体的。あいかわらずその回答内容も納得がいくもので、大前氏の書くこの手の内容はいくら読んでも飽きない。

「知の衰退」からいかに脱出するか?

「知の衰退」からいかに脱出するか?

大前氏が本書で無知と嘆くのは「政治家、教育者、若者」が主にあげられている。頭の悪い政治家、次世代リーダーを育てられない教育者、意欲のない若者。特に若者には「何を言っても無駄」と言っており諦めムードなのか、過去の著書とくらべてとても、彼らに対するメッセージがわかりやすく書かれているように感じる。


集団IQが世界最低レベルの日本では、多くの人が横並びの状態に疑問を持たずにいるという。横並びであれば余計なことを考える必要もない。携帯電話を中心とする半径3メートル以内の生活でも、普通に過ごすことができる。ただ問題なのが国民だけではなく政治家や教育者もそうであること。そんな政治や社会に期待せず「自分らしいユニークな生活をしなさい」と言うのが本書の主旨。


ただ、本書を読んで状況を理解しただけでは知識を得ただけに過ぎない。こういう本を読んで「自分らしいユニークな生き方」を考えて実行して始めて知恵を使ったことになる。


今後、日本のGDPが増えなければ、大企業にいても安心できないし、年功序列で給与があがることはないと思う。むしろ、大企業の方が役に立たないお偉いさんが多いので、若者に回ってくる分け前は少なくなるだろう。それであれば、若いうちに実力をつけることで大企業に入らなくても平均給与くらい稼ぐことが出来るし、どうせ仕事するなら自分の生活が楽しめる条件が揃っている方を選んだほうがいい。昔は仕事がライフスタイルの多くを決めていたような気がするが、これからはライフスタイルに合わせて仕事を選ぶことが日本でもあたり前になってくる。それこそ、ユニークな生き方をしている人の方が選択肢も多いし、充実した生活が送れることになるかもしれない。


ちなみに、知の衰退に関しては以下の1冊もとても参考になる。経済面からみて、日本がどれだけ鎖国的な考えに陥り、海外の投資家からも見放されてきているかがわかる。既に、日本は海外からみて感心がない中、自らの手で成長をする意欲もない。しばらくは厳しい状況は続くことも覚悟して、どう生きるかを考えたほうがよさそうだ。

思考停止社会~「遵守」に蝕まれる日本 (講談社現代新書)

思考停止社会~「遵守」に蝕まれる日本 (講談社現代新書)