IT業界の巨人の行方

社員力―ITに何がたりなかったか



IT業界の巨人ことNTTデータの社長浜口友一氏の著書である。



この方とは、以前2言3言交わしたことがある。とても温和で優しい方だなぁと印象を受けた。NTTデータ社内SNSを導入したり、人材育成プログラムを変えたりするなど、社員力強化にはとても力が入っていると感じ、何となく、話した時の印象とその行動がマッチする方だ。



とまあ、ちょいと気になったので、この本を軽く立ち読み。



その巻末に、浜口社長が考える、将来予測が記載されている。

これは、興味深い。



面白いことに、Googleを意識している。

自分の視点では、SIとGoogleは交わることがないと思っている。



なぜなら、ビジネスの根本的な思想が違うから。

Googleは受託生産はやらないだろう。法人企業に向かって頭下げるGoogle営業は想像できない。彼らは、自分達がやりたいことやっているからこそGoogleなんだし。



ただ、別の視点でセールスフォースドットコムに意識があったところは意外。

こっちの世界も見てるんだね。



セールスフォースはSFAASPサービスで売る、いわゆるSaaS(Software as a Service)界の巨人。



ASPサービスが今後拡大するのであれば、それ自体がWindowsなどのOSやDBなどのプラットフォームには影響されないので、既存顧客から定期的な改変やプラットフォームの入れ替えで利益を得る請負型の企業にとっては脅威になる。



会計システムでさえ、ASPサービスが始まってるんだから、セキュリティの信頼性が確実なものになれば、確かにそちらにシフトしていく。



この本の中で「ムーアの法則」であるチープ革命によりSE単価が下がるというような例にあげているように、WEB2.0と同じ流れが企業内システムに来るのもそう遠い話ではない。



かつてIBMメインフレーム固執してダウンサイジングに対応できす倒産寸前まで追いやられたように、大規模のSI開発に固執することで、同様の損失を被る企業が出てくることだろう。



時代は明らかにSaaSに向かっている。



ドラッカーが「企業の力はその組織の大きさに影響されない」と述べているように、小さな企業が巨人を倒す日がくるのも近い。



浜口社長は、少なからずその脅威を感じていることだろうと、その内容から読み取れる。ITベンチャー側としては、その大巨人を倒してみたいものだ。