海水浴場の心理学ー『完全なる経営』
『完全なる経営』をこの3日間でまとめて読むことができた。
完全なる経営
アブラハム・マズロー (著), 金井 寿宏 (監訳), 大川 修二 (翻訳)
この主題は、いかに組織に属するものが健康的な生活を営めるかという点。
そのためには、経営者側が健康である必要を説いている。
この「健康」というのは精神状態であり、いわゆるY理論的な考え方のことを指す。
で、そんなことは、前から何となくわかっていたが、これを読むことによりマズローの言いたい事がわずかながら理解できたような気がする。
特に、注目したいのは創造性の部分。
創造性あふれる人間というのは、むやみに将来に不安を覚えない。
将来というのは計画通りに進むものではない。だから備えても全てに対処できるはずもない。
それを理解し、目の前に来たことに対して誠実に対処する力こそ創造性だという。
むやみに将来に不安や怖れを覚えないから、目の前の仕事に集中できるんだと。
前のブログにも書いたが、いかに目の前の仕事に没頭する従業員を集められるかが経営の鍵だと思う。
それは、目的に合意するということだけではなく、彼らの創造力も影響する。
もちろん、彼らの力が発揮される環境を作るのが経営者の仕事だ。
じゃあ、どうすれば従業員の創造力が発揮できるのか。
これは、X理論とY理論の組み合わせによる。
マクレガーも説いているが、上司というのは審判でもありコーチでもあるという。
人を管理することと、鼓舞することは共に必要だ。
つまり、X理論的なものも幾分必要となる。
マズローは本書の中で、はじめはX理論、徐々にY理論にシフトするのがよいと説いている。
自分の経験上の話だが、数多くの企業内にブログやSNSを導入するのを支援してきた。
どこの企業でもみられるのが、明確なルールがないとほとんどの人は、社内に対して何も発信しない。
海水浴に行ったときに遊泳区域を示すロープがあるとみんな安心して、その範囲内で安心して泳ぐことができるが、ロープがない海にはよほど泳ぎに自信のある人しか泳ごうとはしない。
これと同じだ。
つまり、X理論的な管理や監視が必要なのは、このロープを張る作業であり、そのロープの外に飛び出さないように監視することじゃないかなと思う。
そのロープの中では多くの人がそれぞれの創造力を最大限に発揮し、いろいろな楽しみ方で自由に遊びまわる。
Y理論が大事だかといって、ロープも何もない環境で「泳げ!」っていわれても、部下は困ると思う。
そのロープは仕事をする上でのルールやプロセスであり、仕事の目的や役割の理解だろう。
こんな発見があり、本書は大満足。
『人間性の心理学』よりも組織論的な意味が強く、実践的な意味合いが強いので、個人的にはこっちの方が好きだ。
ただ、もう一度マズローをベースとしている数々の書籍が読みたくなってきた。
それぞれ分厚い書籍なので大変だが、もう1度読み直してみよう。
何かしら発見があることを期待して。