結局はリソースー『発想法』
今まで発想についていろいろな本を読んだが、この本が一番わかりやすいね。
発想法
渡部 昇一 (著)
とくにさわりの部分。
発想に必要なのはリソースと説いている。
そのリソースは井戸にもたとえられる。
発想が豊かというのは、複数の井戸を所有していること。
1つの井戸が尽きたら、また別の井戸から水を汲めばいい。
例えば、経営学という1つだけの井戸だと、いつかはその知識は枯渇する。
そこに心理学という井戸や、または英語という井戸を持っていれば発想はいくらでも広がる。
その井戸の数が顕著に出るのが小説家だという。
様々な分野に精通している小説家は、その題材がつきない。
一方、リソースのない小説家は自らの数少ない体験やとりあえずの知識からしか、文章がわいてこない。
発想は、どれだけのリソースを持つかに左右される。
それは日々の積み重ねから得られるリソースがあるし、1つの目的に絞ってリソースを集めるという手段もある。
そういえば、何かの本で読んだが司馬遼太郎なんかは、小説を書くための調査として、必ず現地に出向き、その目で文献などを読み情報を収集するんだとか。
その情報の探索方法が1人の人物の生涯を、あれだけ豊かなものにしている。
この人はリソースフルな人ではなく、リソースを作るのが上手いんだろう。
発想を豊かにするには、発想する方法を知ることではない。
鉄鎚の使い方を知っていても家が建てられないのと同じ。
発想法というのは、1つのツールにすぎない。
素晴らしい発想をするには、自らに井戸を幾つも持つこと。
そして、情報を収集する能力につきる。
ブログなんかはそれが顕著だ。
頭の中にある限られた情報から搾り出しているのが感じ取れるものは、大抵長続きしない。
また、何かで得た情報を丸写しで、頭の中で加工せず記載しているものも同じようなものだ。
一方、様々な分野に精通している人、日ごろから情報収集を欠かさない人、そして行動力があり毎日いろいろな体験をしている人のブログは長続きするし、しかも面白いので飽きがこない。
ベンチャー企業の社長ブログが面白いのも、これらの要素が全て詰っているからだろう。
彼らは、特に発想法を習得しているわけではないし。
で、本書は一昔前に書かれたものなので、同じようなことを小説家に例えている。
やはり、知識もなく行動力のない小説家は、発想に乏しいため連載ペースが落ちたり、連載休止に陥り、ひどい場合は切羽詰って自殺することもあるという。更には、小説家であればパクるなんてことも出来ないだろう。
人と違った発想をしたいなら、やはり人と違う知識を持ったり経験をしたりすること。
そのキーワードとしてあるのが「リソース」だ。
発想の本質をついた、見事な一冊だと思う。