日本におけるダイバーシティとは?『個を活かすダイバーシティ戦略』


ダイバーシティを詳しく知りたいと思い購入。事例がたくさん載っていてとても参考になった。


個を活かすダイバーシティ戦略

個を活かすダイバーシティ戦略


ダイバーシティは国籍や人種のイメージがもたれがちで日本においてはいまいちピンとこない。
その中で、日本GE広報の宮森氏のこの発言がとてもわかりやすい。


「この世に同じ人間は誰もいない」(中略)。お互いの違いを認めたうえでどんな人も活躍できる環境が整っている。「建設的な対立」をも楽しんだうえで、「着地点」を見いだし、それをビジネスのイノベーションと自らの成長につなげていける環境。


単なる国籍や人種だけではないことは、慶応義塾大学の高橋俊介教授のHPも参考になる。

ダイバーシティとは「相違性」「多様性」という意味の単語で、転じて多様な考え方・個性を示す。
伝統的な定義としては、「ダイバーシティとは、ジェンダー、人種、民族、年齢における違いのことを差す」となっている。

現代の企業活動において、ダイバーシティの活用が大きな課題となっている。国や文化、地域によってダイバーシティと言っても何を課題と捉えるかは大きく異なっているが、日本においては特に女性の活用をダイバーシティの一環と捉えるケースが非常に多くなっている。


※参考
http://leadershipinsight.jp/takahashi/profile.php?page=3

そして、それを実現するには大きく人事制度を改定しなければならない。
自分も昔は典型的な旧体質な組織にいたので、それらがとても大変なのが実感できる。
当時役員がよく口にした言葉は「女性は結婚して辞めてしまうから男性を多く採用したい」「若い人間を抜擢すると中堅層が機嫌をそこねるから年功序列にせざるを得ない」「若い人間は勉強だと思って配属された現場に文句を言わず一生懸命やっていればいい。」というようなもの。


これは、その企業に限らず、そこそこに従業員数が増えれば、バランスを取るために多くの企業が考える話で特別なことではないと思う。
多様性を認めるということは、上の人間にとってはとても労力がいるし、それを認めることで無能な上司は立場が悪くなるので、よほどの自信がないと出来ない。


ただ、経済成長の過渡期にある日本の企業は徐々にこれらに取り組まざるを得なくなってきている。
システム業界なんてまさにそうなんだけれども、成長期に大量採用した世代が徐々にいい歳になってきている。
バリバリ現場で働けて賃金も安い人たちよりも、管理が中心で給料高い人たちが増えてきているので、人件費と労働力のバランスが崩れてきている。


こういう状況が利益を圧迫してくると、何かを変えなければならない。
その典型が「成果主義」となる。さすがにリストラでの人員削減は大変なのでまずはそこから始める方がよいんだろう。


つまり、自分自身はダイバーシティを「成果主義」と理解した。
成果主義を取り入れることで「女性の登用」や「若手へのチャンス」、そして「ベテラン社員の定年後の活躍」など、スペシャリティのある人材を維持できる。ただ、単なる成果主義ではなくスタートラインからチャンスを平等に与えることが必要。成果をあげた人間を引き上げることではない。平等なスタートラインと平等な評価だ。


これらを取り入れるのは、とても大変なことではあるが、企業内の少子高齢化が進む中、必要となる企業が増えてくるんだろう。
本書には、それらを推進するための方法論も概要ながら書かれている。


吉越氏の『「残業ゼロ」の仕事力』に書かれているように、社長が絶対的な意志をもってやることも必要だ。
プロジェクトを開いて、みんなの意見を聞いてだと、それぞれの生活に関わる問題になるのでまとめるのに相当時間がかかる。
トップが決断して「やると言ったらやる」。
大阪の橋本府知事のように、反発を覚悟してのあれくらいの気持ちがないとダメだと思う。


一方、ベンチャー企業は多様性に満ち溢れている。
新卒で採用されると1つの価値観を徹底して押し付けられるが、中途採用者の集まる企業においてはその背景はバラバラだ。
若者が3年で会社を辞めて転職すれば、給与が下がっても階層社会から抜け出し実力主義の中で思いっきり動ける場所へと開放されるのも事実。


昔は、出世や昇給が若者のモチベーションをあげるものだったが、ワークライフバランスが重要視される中、ダイバーシティを取り入れた環境こそが働きやすい職場となるんだろう。
実際に、勝間さんの本なんかが売れているのは、時代がその傾向になってきた証拠だ。


しばらく、このキーワードには注目していこうと思う。


※関連リンク 
ワークライフバランスについて
http://d.hatena.ne.jp/naotake1974/20080903/1220456487
格差社会について
http://d.hatena.ne.jp/naotake1974/20080921/1221986937