従業員もボーっとしている場合じゃない

いろいろと話題になっている格差について。


格差と希望―誰が損をしているか?

格差と希望―誰が損をしているか?


経済学者である著者の視点でかかれており、なるほどと思うところがちょこちょこと。


例えば、雇用について企業が不況になっても正社員を解雇できないような規定を作ったとする。しかし、不況時に従業員を解雇できないとなると企業側は不況時にも過剰な人員とならないように、最低限の人数にて事業を行う。そうすると、景気が良くなっても従業員を増やせないため、正社員の残業時間が増えるという。こういうのは大抵、労働組合の主張で成り立つものだが、最終的には自分達の首を絞める形になってしまう。


外注とか派遣を雇えばっていのは考えはまっとうだが、経済学的に考えると自分達の会社の景気がいいときは競合各社も景気がいいので、能力の高い人材はあんまり回ってこない。新卒時に能力の高い社員を雇って教育した方が労働生産性が高くなるのは明らかなのに、それが出来なくなる。


そもそも格差がなぜ出るのかの一番の元凶は、年収の高いベテラン社員が自らの保身が引き起こす意味合いが強い。自らの給料は維持。その分若手は採用しない、給料を上げないなど。上記の例なんかは、組織の流動性をなくしてしまうので、さらに社内の格差を広げてしまう可能性が高い。


実際、経営的な視点でいうと、従業員側が解雇を恐れていることがわかる方が、扱いやすいと思うし、交換条件を用いるなら終身雇用と引き換えに、残業や休日出勤、さらには給与の増加幅などもコントロールしやすくなる。これは、対極的にある外資系企業を見ればあきらか。いつでも解雇を出来る変わりに、給料は高く設定されている。


自分の会社の従業員を大切にするというこのような方針は、今いる従業員を大切にするために、新卒採用や中途採用を控えることで、市場の流動性をとめてしまう要素も強い。社会は2:6:2で動くと言われているように、全体の2割が組織に貢献し、6割が何となく働き、2割が怠慢というような法則がある。


組織貢献する2割が流動的な組織は問題があるが、後ろの2割を流動的に出来ないのも問題がある。そのあたりを新卒社員や中途採用者で流動させることで、活性化させている組織もかなりあると思う。それは解雇という形で流動的にするのではなく、従業員1人1人に役割をあたえ成果を求めることで実現する。これは吉越氏が言うワークライフバランスと同じで、効率化を実践できるものがその権利を得られるような、むしろ成果が求められるので怠慢は自らの進退に影響する。


また先日、アルバイトの最低賃金が始めて700円台になったというニュースがあったが、このような最低賃金の引き上げも格差を広げる理由になるという。最低賃金があがるとどうなるかというと、企業側は雇用時にその賃金にあった能力を持つ人しか雇わなくなるという。つまり、今までは時給680円で雇われていた人たちの職がなくなる。


企業側は出来る限りやすく有能な人を雇おうとする。アルバイトの賃金なんかでいうと、就職先の少ない地方では安い給料で有能な人が多く雇えるという。すると、若者にとって都会は就職先は豊富だが、能力がないと逆に厳しい社会になってしまう。企業が能力の高い新卒社員を低い給与で雇えるのも、彼らが就職が未知の世界であり、選択の視野が狭くなるところを拾いあげるからで、同じような理論だ。


これを見て思うことは「権利」というのは自らを守るものではあるが、逆に自由を束縛するものでもある。企業が従業員に対して手厚い待遇が出来る、特に毎年給料があげられるのは、新卒社員を雇っても、それを満たすための利益が充分にあるからだ。


しかし、未だに多くの若者が給料は年々あがるものだと勘違いしていたりするのをよく見かける。自分が知っているある会社なんかは、それをカモフラージュするために若い時は給料があがるのを実感させながらも、転職が厳しくなる30歳を過ぎた頃になると上げ幅を減らす給与テーブルにしたりしている。本人が給料が自然とあがらないと気づいた時には手遅れ。実は、その会社も「給料が低い」という若手の声を取り入れて、その要望を表向き満たした形をとっている。


何となくだが、格差社会というのは、短絡的な思考の人が損しているんじゃないかな。
親の世代は何も考えなくてもマイホームが買えたりしてたけど、自分らの世代は長期的視点を持つ人だけが、自分が思い描く生活ができるようになりつつあるような気がするね。


ニートと同じで「今は生活できるからそれでいい」とか「自分がよければそれでいい」じゃなくて、将来どうありたくて、どれくらいの年収がいるとか、どのような生活がしたいという考えとか、その制度を取り入れたら誰が損するとか考えてから、「給料上げろ」とか「終身雇用にしろ」とかを主張しないと。普段から、雇用とかについては経営者の方が数倍考えているんだから、ちゃんと考えて主張しないと格差は広がるばかりだろうね。