チェ・ゲバラの遥かな旅
チェ・ゲバラを知るための入門書としては最適。内容は淡々と進む。
- 作者: 戸井十月
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2004/10/20
- メディア: 文庫
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で、本書を読んだ目的は、ただ1つ。キューバー革命を成功させても、なおも戦い続ける理由が知りたかったからだ。映画からはそれを知ることが出来なかったが、本書を読んで僅かながらぼやけていたものが徐々に見えるようになったのは、やはり革命に参加する前の彼の生い立ちにあったのだと感じられる。
私見だが、影響力が強かった要因は以下と解釈する。
- 喘息持ちである子供への献身的な両親の優しさと厳しさ
- 幼少時代から積み上げた強い信念
- 南米各地から北米までの旅を試みる好奇心
- (信念以外での)様々な人との出会いにおける感受性の強さ
特に、ラテンアメリカ共和国を目指してキューバー革命後にも新たな戦いに挑む姿勢は4番目の感受性の強さがポイントではないだろうか。なぜなら、ゲバラは直接自分の足で南米各地を周り、人々の生活の苦しさを目にしている。更には、自分より貧しい人たちが、外国人である自分に対して親切に接してくれるその優しさが何よりも、その思いを強くしたのだと思う。
『チェ 39歳 別れの手紙』にあった、ボリビア軍兵士に尋ねられた「神は信じるか?」という質問への回答が印象に残った。
「神は信じていない。私は人を信じている。」
それに対する資本主義社会は目に見えない「欲望」の先に映し出されているものだけが強く信じられている。その土地の人との触れ合いもなく、側近から聞く資源を獲得するためだけに、略奪や侵略を繰り返す。現代社会におけるグローバル化する企業戦略の中には、似たようなものが多いのではと、とても考えさせられる。果たして新たな土地に企業が進出する際に、現地の人と積極的な交流を持つ経営者はどれくらいいるのだろうか?せいぜい、その土地に関連する役人との接待に興じているように思えてならない。
また、日本人の海外旅行は、それが旅であってもどの土地に行った、何を見たということが中心におかれている(自分自身もそうであったと反省する)。日本語が日本でしか通用しないというハンディキャップはあるが、その土地の人と話し、生活を体験することを目的とすることが少なく感じる。本書を読んで、より多くの他国の人と話せるよう、英語をもっと積極的に学ばなければという気持ちになった。
ゲリラを得意とする革命家という意味では遠い存在だが、その好奇心と感受性は少しでも近づけられるのではないかと思う。自分にとっては印象に残った彼の南米旅行。ぜひ、第3部作として『チェ・ゲバラ 25歳の旅立ち』などという形で、カストロと会うその日までの生い立ちも公開してほしいものだ。