久々のピーター・センゲ

出現する未来 (講談社BIZ)以来、実に4年ぶりとなるセンゲの新刊。


持続可能な未来へ

持続可能な未来へ


最強組織の法則―新時代のチームワークとは何かにて組織論者としてセンゲは有名だが、今回の主題は、企業は環境問題に取組むことで、次の世代につなぐ活動をしていきましょうというような内容。また、そのような活動を無視することは、その企業のブランド価値を下げると共に、それらを推進する法規制などにより多くのペナルティが課されるため、不利な状況に追い込まれるという。


センゲらしいところは、本書の主題の大切さを論じるだけではなく、経営者ではなくても、わずかなきっかけで自身がリーダーとなり推進できる可能性があることを事例と、更には実現のプロセスまでも論じているところ。周囲を巻き込んで企業風土を変えていくというベースの点は、「学習する組織」がベースとなっている。


鳩山政権は2020年までに1990年と比較して25%の温室効果ガス削減目標を掲げており、各企業に対しては今後ノルマが課されることは明らかで、大きなコストとなることが予想される。一方、カーボンオフセットというような排出量取引も徐々に開始されているので、本書の事例にあるように環境対策にいち早く取組んでいる企業にとっては、逆に商機でもある。


影響力のある大企業(事例がコカコーラ、ナイキ、グーグルなど)がまだまだ中心の話ではあるが、法規制という意味においては中小企業の僅かな利益を食いつぶすこともありえる。ページ数も多く内容は重めだが、とてもタイムリーな話題なので価値ある一冊かと思う。


で、自分自身の経験でいうと環境問題に限らず、マーケットの様相や社会のルールなどが変わった時の、リーダーの決断というものが本書に書かれており、それらを振り返る良い機会となった。例えとして紹介されている「北に全速力で走る速度を落とすことは、南に向かうという意味ではない」というように、1から方向転換をする決断も時として必要となる。これらの決断が遅れるとレッドオーシャンの争いとなり、逆に利益を食いつぶすこともある。こういう時は、コンサルタントなど客観的判断が出来る外部の人間に助けられる時もあるが、自身が成長していく上で、そういう判断を出来るようになることが、如何に重要かというのが、ここ数年の仕事の中で大いに感じたこと。そいうことを振り返れただけでも、センゲの本を読んでよかったと思った。


ちなみに本書は、タイトルにあるように、企業を営む上で環境問題に向き合うことの大切さが主眼であるということはお間違えなく。あくまでも、組織論はそれを実現するための手段。目的があり初めて、その手段が生きてくるので。