究極的に戦略とは・・・『あたらしい戦略の教科書』


本書は戦略の立て方ではなく、組織における戦略の実行について焦点を当てている。
そこが「あたらしい」と意味しているところ。


あたらしい戦略の教科書

あたらしい戦略の教科書


勝間さんの『勝間和代のビジネス頭を創る7つのフレームワーク力 ビジネス思考法の基本と実践』は、戦略を立案時に抜け漏れをなくすためや時間効率化のためのフレームワークを紹介している。ただ、それだけでは分析という部分についてはかなりの部分をクリアすることは出来るが、解決をするための具体的な戦略の実行という部分は補いきれない。


解決策の立案なんてまさにそう。「頭では問題はわかっているけど、どうすればよいのか?」なんていうのは、常にビジネスにはつきまとう。
そんなときは、『ブルー・オーシャン戦略 競争のない世界を創造する (Harvard business school press)』なんかを読んだり、カルロスゴーンの『ルネッサンス ― 再生への挑戦
』なんかを読んで、とにかくヒントを探すが急に出来るものではない。日ごろからケーススタディをすることで、戦略立案に対する準備が必要だ。


そして、更にやっかいなのは、戦略立案後の実行。この部分は『ブルーオーシャン戦略』においても、重要事項として書かれていた。
特に、本書はここに特化し、更には日本の組織におけるよくあるパターンなんかも含めて解説されている。


ここで、注目するべき部分は、今までの戦略の教科書は論理的な手法が書かれている左脳的なものだったが、あくまでも「あたらしい」戦略は感情的部分を重視されている。
「戦略の実行には、危機感と希望を失わない態度を兼ね備えた人材を選ぶ」「戦略のキャッチコピーを考える」など、戦略に関わる人たちの感情を動かすために必要な要素がふんだんに盛り込まれている。


戦略の実行には、常に人が中心にいること。以下の一文はそれを端的に表している。

究極的には、戦略とは、コミュニケーションを活性化させるための道具です。


戦略は完成したら後は実行しておしまいという簡単なものではなく、実行することが最も困難だ。
関係する人たちがその戦略実現のために議論することや、実行部隊の気持ちが折れないようにリーダーがコミュニケーションを取ったり励ましたりすること。

情報を収集し、それを分析すること自体は戦略ではない


ビジネスは感情がないと動かないことを、改めて認識する1冊だった。